マーケティング論

パーセプションフロー・モデルとは?カスタマージャーニーとの違いと実務での使い方

マーケ施策を頑張っているのに、

  • 認知は取れているのか?

  • ブランドはどう見られているのか?

  • どこで検討が止まっているのか?

がよく分からないまま、
「バラバラの施策」だけが増えていく… という悩みはよくあります。

そこで役立つのが 「パーセプションフロー・モデル」 です。
(以下、本記事ではこの表記で統一します)

この記事では、マーケティング担当者向けに

  • パーセプションフロー・モデルの基本

  • カスタマージャーニーとの違い

  • 実務での具体的な使い方

  • BtoC・BtoBの簡易事例

  • すぐ使える作成ステップとテンプレ

まで、まとめて整理します。

目次

1. パーセプションフロー・モデルとは?

1-1. 一言でいうと

パーセプションフロー・モデルとは、

「生活者がブランドや商品をどう“見ているか(パーセプション)”が、
どんな順番で変化していくのか」を整理したフレームワーク

です。

AIDMAのように「行動のステップ」を整理するのではなく、
“頭の中・心の中で起きている変化”を時系列で設計するためのモデルです。

1-2. パーセプション(Perception)とは?

ここでいうパーセプションは、

  • このブランドは 何をしてくれる存在 だと思われているか

  • どんな イメージ・印象 を持たれているか

  • 一言でいうと どう表現されるか
    (例:安い/おしゃれ/信頼できる/古い/よく分からない…)

といった 主観的な“見え方・受け止め方” のことです。

同じテレビCMを見ても、

  • 「安そうで助かる」と感じる人もいれば

  • 「なんか安っぽい」と感じる人もいる

この“感じ方の差”こそが、パーセプションです。

1-3. 「フロー(流れ)」の考え方

パーセプションは一瞬で決まるものではなく、だいたい次のように変化します。

① まったく知らない
② 名前だけは知っている
③ 何をしてくれるか何となく分かる
④ 自分ごと化される(自分に関係ありそう)
⑤ 他より選ぶ理由ができる
⑥ 実際に使ってみる
⑦ 体験を通じて印象が強化・変化する

ざっくり図にすると、こんなイメージです。

「知らない」
→「知っている」
→「何をしてくれるか分かる」
→「自分に関係あると感じる」
→「これを選ぶ理由がある」
→「実際に使った印象が固まる」

この “認知の流れ”全体を設計する のが、パーセプションフロー・モデルです。

2. カスタマージャーニーとの違い

「それ、カスタマージャーニーマップと何が違うの?」
という疑問を持つ方が多いので、ここで整理します。

2-1. カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーは、

  • 顧客がどんな 行動 を取り

  • どんな 接点(タッチポイント) を通り

  • どんな 感情や課題 を持つか

時系列で可視化する図 です。

例)

  • 課題に気づく → 検索する → 比較サイトを見る → 公式サイトを見る → 問い合わせる → 購入

といった 「何をしているか」 にフォーカスしています。

2-2. パーセプションフロー・モデルとの違い

一方でパーセプションフロー・モデルは、

同じ行動をしていても、「どう見えているのか」が違う
=そこを設計しよう

という発想です。

  • カスタマージャーニー:
    → 「何をしているか」「どこに触れているか」

  • パーセプションフロー・モデル:
    → 「どう感じているか」「どう見えているか」

という 視点の違い があります。

2-3. ベストは「二層構造」で考える

実務では、次のように 二階建て で考えると設計しやすくなります。

  • 上段:カスタマージャーニー(行動・接点)

  • 下段:パーセプションフロー(頭の中の変化)

例)

  • 上段:

    • TV CMを見る → 検索する → 公式サイト → 比較サイト → 店頭 → 購入

  • 下段:

    • 「何の会社か分からない」
      →「あのCMの会社かも」
      →「価格が高そう…」
      →「でも口コミ評価は高い」
      →「自分にも手が届きそう」
      →「買ってみよう」

3. 典型的なパーセプションフローのステージ

会社やコンサルによって呼び方は違いますが、実務で使いやすい形にまとめると、次の6ステージが扱いやすいです。

  1. 認知(Awareness)

    • 「名前を知っている状態」

  2. 理解(Understanding)

    • 「何をしてくれるブランドか知っている状態」

  3. 共感・好意(Affinity)

    • 「自分に合っていそう」「なんか好きかも」

  4. 優位性・信頼(Preference)

    • 「他よりもこれを選ぶ理由がある」

  5. 行動(Action)

    • 購入・申込・資料請求など

  6. 体験・推奨(Experience & Advocacy)

    • 体験を通じて印象が固まり、リピート・口コミへ

4. 実務での使い方:作り方ステップ

ここからがマーケ担当者にとって一番重要な部分です。
パーセプションフロー・モデルを 自社で実際に作る手順 を解説します。

ステップ1:対象とゴールを決める

まずは前提の整理です。

  • 対象:

    • 例)「中小企業のバックオフィス担当者」

    • 例)「20〜30代のスキンケア感度が高い女性」

  • ゴール:

    • 例)「トライアル申込数の最大化」

    • 例)「ECでの定期購入数UP」

誰の、どの行動までのフローを描くのか を最初に決めます。

ステップ2:フローのステージをざっくり置く

前述の6ステージをベースに、自社向けに少しカスタマイズします。

例)

  1. 未認知

  2. 名前だけ認知

  3. 何をしてくれるか理解

  4. 自分ごと化(ニーズと結びつく)

  5. 優位性を理解

  6. 具体検討(見積・カートインなど)

  7. 利用・体験

  8. リピート・推奨

細かくしすぎると運用が難しくなるので、
5〜8ステージ程度 から始めるのがおすすめです。

ステップ3:各ステージで「こう見られたい」を言語化する

ここがパーセプションフロー・モデルのコアです。

各ステージごとに

  • 「この段階の人に、どう見られていたいか?」

  • 「一言でいうと、どんなラベルを貼られたいか?」

を “生活者の言葉” で書き出します。

例)SaaSの場合

  • ②名前だけ認知:
    「なんか聞いたことあるSaaS」

  • ③理解:
    「バックオフィスの手作業を減らしてくれるツール」

  • ④自分ごと化:
    「うちみたいな人手が少ない会社こそ使うべきツール」

  • ⑤優位性:
    「他より導入が簡単で、サポートが手厚いツール」

社内の専門用語ではなく、顧客が言いそうな言葉 で書くのがポイントです。

ステップ4:現在のパーセプションを把握する

理想だけ描いても意味がないので、現状を確認します。

  • 定量データ

    • 認知率・検索ボリューム

    • サイト流入・CVR・離脱ページ

    • 指名検索の割合

  • 定性データ

    • インタビュー・ユーザー調査

    • 営業のヒアリング(初回商談で何と言われるか)

    • SNS・口コミサイトの記述

ここから

「今どう見られているか」 vs 「どう見られたいか」

のギャップを洗い出します。

ステップ5:ギャップの大きいステージに集中する

すべてを一気に変えようとせず、
ギャップが大きく、ビジネスインパクトも大きいステージを優先します。

例えば:

  • 認知は高いのに、
    →「何をしている会社か分からない」と言われる
    「理解」のステージに投資すべき

  • 好意は高いのに、
    →「価格に対する価値が分からない」と言われる
    「優位性」の訴求を強化

という形で、注力ステージを決めます。

ステップ6:タッチポイントとコンテンツを設計する

最後に、各ステージごとに

  • 設計したいパーセプション

  • それを実現するタッチポイント

  • 必要なメッセージ・コンテンツ

を紐付けていきます。

簡易テンプレは次のようなイメージです。

ステージ 想定パーセプション(顧客の一言) 主なタッチポイント 施策・コンテンツ例
認知 「名前は聞いたことある」 ディスプレイ広告 / PR / SNS 認知獲得キャンペーン、動画広告
理解 「何をしてくれるか分かった」 LP / オウンドメディア 図解入りサービス紹介記事、FAQ
共感 「自分の課題に刺さりそう」 事例ページ / ブログ Before/After事例、顧客インタビュー
優位性 「他よりここがいいと分かった」 比較ページ / セミナー 競合比較表、価格と価値の説明コンテンツ
行動 「とりあえず試してみよう」 問い合わせフォーム / EC 無料トライアル導線、EFO、限定オファー
体験 「やっぱり良かった/微妙だった」 プロダクト / サポート オンボーディング設計、チュートリアル、カスタマーサクセス

この表を埋めるだけでも、
「バラバラの施策」から「一貫したコミュニケーション」へ 近づきます。

5. BtoCとBtoBの簡易事例

5-1. BtoC:D2Cスキンケアブランドの場合

ターゲット:20〜30代女性、敏感肌で悩んでいる層

フロー例:

  1. 未認知

    • (まだ何も知らない)

  2. 認知

    • 「インスタでよく見るスキンケアブランド」

  3. 理解

    • 「低刺激で、敏感肌向けのブランド」

  4. 共感

    • 「自分と同じような肌悩みを持つ人の口コミが多い」

  5. 優位性

    • 「成分がシンプルで、添加物が少ない」「返金保証がある」

  6. 行動

    • 「まずはトライアルセットを頼んでみる」

  7. 体験・推奨

    • 「数週間使っても荒れない。周りにも勧めたい」

ここに対して、

  • 認知〜共感:インスタ・UGC・インフルエンサー

  • 優位性:成分比較コンテンツ・ドクター監修記事

  • 行動:初回限定トライアルや定期便訴求

  • 体験:同梱冊子・ステップメール・LINEサポート

と、パーセプションフロー起点でタッチポイントを設計します。

5-2. BtoB:バックオフィスSaaSの場合

ターゲット:従業員100名未満の中小企業、バックオフィス担当

フロー例:

  1. 認知

    • 「勤怠や経費精算のSaaSがあるらしい」

  2. 理解

    • 「紙やExcelでやっている作業をオンライン化できるツール」

  3. 共感

    • 「総務1人で回している会社にこそ必要そう」

  4. 優位性

    • 「初期費用ゼロで、サポートが手厚い」

  5. 行動

    • 「まずは30日無料トライアルを申し込んでみる」

  6. 体験

    • 「従業員にもすぐ浸透した。これなら本格導入したい」

ここに対して、

  • 認知:展示会・Web広告・タイアップ記事

  • 理解:図解LP・オンラインデモ動画・ホワイトペーパー

  • 共感:同規模企業の導入事例・“総務1人”に寄り添うコンテンツ

  • 優位性:他社比較表・導入までのステップの分かりやすさ

  • 行動〜体験:オンボーディングメール・カスタマーサクセス

などを配置していきます。

6. KPI・測定の考え方

パーセプションフロー・モデルは「ふわっとした概念」に見えがちですが、
KPIとセット で設計すると運用しやすくなります。

6-1. 定量KPIの例

  • 認知

    • 認知率調査、インプレッション、指名検索数

  • 理解

    • サービスページ閲覧数、スクロール率、滞在時間

  • 共感

    • 事例ページの閲覧数、コンテンツのシェア数

  • 優位性

    • 比較表の閲覧数、商談化率、デモ申込率

  • 行動

    • CV数・CVR、トライアル申込数

  • 体験

    • 継続率、解約率、NPS、レビュー評価

6-2. 定性KPIの例

  • ブランドイメージ調査(想起ワード)

  • 営業・CSが日々聞いている「お客様の第一声」

  • SNS・レビューサイトでの口コミのトーン

定量+定性を組み合わせて、

「狙ったパーセプションになってきているか?」

を定期的にチェックするのがポイントです。

7. よくある失敗と対策

失敗1:施策から逆算して無理やりフローを作る

「今やっている施策を全部並べて、それっぽくつなげる」
という作り方をすると、“ただの棚卸し” で終わります。

対策:

  • 先に「こう見られたい」を決める

  • その後に「必要な施策」を選ぶ

という 順番を守る ことが重要です。

失敗2:パーセプションが抽象的すぎる

「信頼されるブランド」「好感度の高いブランド」など、
どの会社も言いそうな言葉 だけで終わっているケースです。

対策:

  • 実際の顧客が言いそうな 口語の一文 に落とす
    例)「ここにお願いすれば、自分がやらなくていいから助かる」

失敗3:ステージを細分化しすぎて運用不能になる

細かく分けすぎると、
「この施策はどのステージ向け?」が分かりにくくなります。

対策:

  • 最初は5〜8ステージで始める

  • 運用しながら必要なところだけ細かくする

8. 今日からできる「簡易パーセプションフロー」作成ワーク

最後に、30〜60分でできる簡易版ワークをご紹介します。
ワークシート代わりに、社内MTGなどですぐに使えます。

  1. ターゲットとゴールを一言で書く

    • 例:「中小企業の総務担当に、勤怠SaaSのトライアルを申し込んでもらう」

  2. フローのステージを5〜6つ書く

    • 未認知/認知/理解/共感/優位性/行動 など

  3. 各ステージで「顧客が言っていそうな一言」を書く

    • 良くも悪くもリアルな言葉で

  4. 「どう言ってほしいか」(理想のパーセプション)を横に書く

    • 現状 vs 理想のギャップが可視化される

  5. ギャップが大きいステージを1〜2つ選び、
    「そこを変える施策」をブレストする

このワークを一度やるだけでも、
「何から手をつけるべきか」がかなりクリアになるはずです。

パーセプションフローで「点の施策」から卒業する

本記事のポイントを振り返ると、

  • パーセプションフロー・モデルは、
    顧客の“見え方・受け止め方”の変化を時系列で整理するフレームワーク

  • カスタマージャーニーは「何をしているか」、
    パーセプションフローは「どう感じているか」にフォーカス

  • 実務では「ジャーニー(行動)」×「パーセプション(認知)」の二層構造で設計すると効果的

  • 各ステージで「どう見られたいか」を言語化し、
    タッチポイント・コンテンツ・KPIを紐付ける

  • まずは簡易フローから始め、ギャップの大きいステージに集中投資する

パーセプションフローを一度描いておくと、

  • 新しい施策の企画

  • 既存施策の見直し

  • MAやアクセス解析ツールの活用方針

など、マーケ全体の“共通言語”として機能していきます。

  • この記事を書いた人
Glass

Glass

【経歴】
▶︎ ITベンチャー/営業部長 ▶︎ リーガルテック事業責任者 ▶︎ 大手広告代理店 ▶︎マーケティング支援企業 ▶︎コンサルマーケ職(現職)
MBA(経営学修士),WEB解析士
【専門領域】
マーケティング・サイエンス,行動経済学,消費者行動,マーケティング・オートメーションなど
【コンタクト】
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