今回は「マーケティングファネルと顧客行動モデル(AIDMA・AISAS)の活用術」をテーマに、マーケティング戦略をより効果的に実践していくためのポイントを解説していきます。
ファネルの各段階とAIDMA・AISASを掛け合わせながら、コンテンツ配置や顧客接点の最適化事例を紹介しますので、是非参考にしてみてください。
1.マーケティングファネルとは
まずはおさらいとして、マーケティングファネルについて簡単に確認しましょう。
マーケティングファネルは、見込み顧客が商品やサービスを認知し、最終的に購入に至るまでのプロセスを段階的に示したものです。一般的には以下のステージに分けられます。
- 認知(Awareness)
- 商品・サービスの存在を知る段階。広告・PR・SNSなどで幅広くリーチしていきます。
- 興味・関心(Interest)
- 顧客が「もっと知りたい」という興味や関心を抱く段階。ブログ記事やSNSでの情報提供が重要。
- 比較検討(Consideration)
- 顧客が複数の選択肢を比較し、メリット・デメリットを検討する段階。口コミや導入事例が効果的。
- 購入(Conversion)
- 顧客が最終的に購入・申し込みを行う段階。購入ページの分かりやすさや特典の提供が大切。
- リピート(Retention)
- 購入後も継続利用や再購入してもらう段階。顧客満足度向上やロイヤルティ強化がポイント。
このファネル構造を理解しておくと、顧客がいま「どの段階にいるか」「どのような情報を必要としているか」を把握しやすくなります。
2.顧客行動モデル(AIDMA・AISAS)とファネルの関係
マーケティングファネルを活用するうえで、顧客の心理変化や行動パターンを捉えるために使われるのが、AIDMAやAISASといった顧客行動モデルです。
2-1.AIDMAモデル
AIDMA(アイドマ)モデルは、マス広告全盛期から使われている伝統的なフレームワークで、以下の5段階で顧客の心理・行動を捉えます。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
AIDMAでは、「人は商品やサービスに注意を向け、興味を抱き、欲しいと思い、記憶したうえで、最終的に行動(購入)に至る」という流れを重視しています。マス広告や店舗販売など、従来型のマーケティング施策に当てはめやすいモデルです。
2-2.AISASモデル
AISAS(アイサス)モデルは、インターネットやスマホの普及を背景に電通が提唱した、デジタル時代に適した行動モデルです。以下の5段階から構成されています。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(共有)
AISASのポイントは、「興味を持ったらまず検索し、購入後や利用中にSNSなどで積極的にシェアする」という、インターネット時代ならではの行動ステップを明確にしている点です。口コミやSNSの拡散が大きな影響力を持つ現代では、このモデルがマーケティング戦略を考えるうえで非常に有用です。
2-3.ファネルと顧客行動モデルを掛け合わせる
たとえばAIDMAをファネルに当てはめると、
- Attention → 「認知」
- Interest, Desire → 「興味・関心」~「比較検討」
- Memory → (比較検討後の記憶・印象)
- Action → 「購入」
といった形で対応させることができます。AISASにおいては、Search(検索)が「比較検討」に、Share(共有)が「購入後のファン化・口コミ拡散」に当たるイメージです。
- Attention, Interest → 「認知」~「興味・関心」
- Search → 「比較検討」
- Action → 「購入」
- Share → 「リピート・ファン化」
このように、ファネルの各ステージごとに「顧客がどのような心理と行動を取るのか」をAIDMAやAISASで捉えると、より具体的な施策に落とし込みやすくなります。
3.カスタマージャーニーマップの活用
ファネルやAIDMA・AISASをさらに具体化して活用する際に役立つのが、カスタマージャーニーマップです。顧客が商品・サービスに出会い、購入し、リピートするまでの具体的な行動・接点・感情を時系列で可視化します。
3-1.カスタマージャーニーマップの作り方
- ペルソナ設定
- 典型的な顧客像を詳細に描く(年齢・職業・趣味・課題など)。
- 行動ステージの洗い出し
- 認知 → 興味 → 比較・検討 → 購入 → 利用 → リピート/ファン化
- タッチポイントと感情・思考の整理
- 各ステージで顧客が接するチャネル(Web、SNS、店舗、広告など)や抱く疑問・気持ちをリスト化。
- 改善点・施策の導出
- 各タッチポイントで何を強化・改善すれば、顧客体験が向上するかを検討。
3-2.顧客行動モデルとファネルの連携
- AIDMAの場合、Memoryをしっかりと残すには「比較検討フェーズ」での情報提供が重要など、段階ごとに施策の最適化ポイントが見えてきます。
- AISASの場合は、Searchが活発化する「比較検討フェーズ」で口コミサイトやSNS検索が活用されるため、ここでの情報設計やSEO対策が鍵となります。
カスタマージャーニーマップでこれらを時系列に並べると、より綿密な施策設計が可能です。
4.具体例:Web広告・SNS・メールマーケティングの最適な組み合わせ
それでは、実際にどのようにWeb広告やSNS運用、メールマーケティングを組み合わせていけばよいかを、ファネルの各段階(認知~購入~リピート)ごとに見ていきましょう。
4-1.認知フェーズ(Attention)
- Web広告(ディスプレイ広告、リスティング広告等)
- 新規顧客にリーチしやすい。ディスプレイ広告で潜在層へ訴求、リスティング広告で顕在層を取り込む。
- SNS運用(オーガニック投稿・広告配信)
- 広告配信やハッシュタグ活用で、ブランドの存在を広く知ってもらう。短時間で興味を引ける動画やビジュアルが有効。
AIDMA/AISAS視点
- Attention(注意)を高める施策。SNSや広告で「目に留まる」演出が重要。
4-2.興味・関心フェーズ(Interest)
- ブログやオウンドメディア
- 専門的な記事、導入事例、活用ノウハウを発信することで、興味を深めてもらう。
- SNSでのコミュニケーション
- コメントやDMによる質問対応、ライブ配信などで双方向のやり取りをして親近感を醸成。
AIDMA/AISAS視点
- Interest(興味)を高めるために、詳細情報を求めるユーザーに向けた魅力的なコンテンツを用意する。
4-3.比較検討フェーズ(Desire/Search/Consideration)
- リターゲティング(リマーケティング)広告
- 一度サイトを訪れたユーザーに対して、商品メリットやキャンペーン情報を再訴求する。
- メールマーケティング(ステップメール)
- 見込み顧客に対して、比較検討の材料となる製品ベネフィットや導入事例をタイミングよく送信。
- オンラインセミナー・ウェビナー
- 実際の事例や専門家の話を聞ける場を用意し、疑問点を解消して購入意欲を高める。
AIDMA/AISAS視点
- AIDMAのDesire(欲求)・Memory(記憶)を刺激、AISASのSearch(検索)をサポート。口コミ・レビュー・コンテンツを充実させて「比較しやすさ」を提供する。
4-4.購入フェーズ(Action/Conversion)
- ランディングページ最適化(LPO)
- CTAボタンやフォームの使いやすさを徹底的に見直し、購入のハードルを下げる。
- クーポンや初回特典の提供
- 「いま購入するメリット」を明確化し、購入を後押し。
- 実店舗や対面サポートとの連携
- 必要に応じて店頭や電話サポートなど、オフラインチャネルでのフォローも強化。
AIDMA/AISAS視点
- Action(行動)を促す段階。スムーズに決済・申し込みへ進める環境づくりが大切。
4-5.リピート・ロイヤルティ向上フェーズ(Retention)
- アフターフォロー(メールマーケティング)
- 購入後ユーザーに向けて定期的にニュースレターや活用方法を案内し、満足度向上を図る。
- SNS・コミュニティ運用
- ユーザーが商品やサービスについて情報交換しやすい場を作る。口コミや追加購入を促進。
- アップセル・クロスセル
- 高額プランや関連商品を提案し、LTV(顧客生涯価値)を高める。
AIDMA/AISAS視点
- AISASのShare(共有)を生かし、SNSや口コミでブランドへの好意が広がるよう設計。AIDMAなら購入後の記憶(Memory)を維持し、再度Action(リピート)を引き出す。
5.まとめ
AIDMAやAISASのような顧客行動モデルは、マーケティングファネルと密接に結びついています。特に以下のポイントを意識すると、より効果的なマーケティング戦略が構築できます。
- ファネルの各ステージで必要な情報や施策を明確にする
- 認知からリピートまで、顧客がどのような心理・行動をとるか把握し、それに沿った情報を提供。
- AIDMA・AISASを使って顧客心理を可視化する
- AIDMAはマス広告中心の従来型、AISASはデジタル中心の現代型、と特徴を捉えて使い分ける。
- カスタマージャーニーマップで接点を整理する
- 各タッチポイントで顧客が抱く疑問や感情を分析し、最適な施策を配置。
- 複数のチャネルを組み合わせてシームレスな体験を提供する
- Web広告、SNS、メールなどを連携させ、一貫性のあるコミュニケーションを行う。
現代のマーケティングはオンライン・オフラインともに多様化していますが、基本となる「顧客はどの段階で何を求めるのか」という視点は不変です。AIDMA・AISASという視点を取り入れて、ファネル全体を俯瞰しながら効果的な施策を打ち出していきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。今後も、マーケティング施策に役立つフレームワークやツールの使い方を発信していきます。
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