マーケティングの現場では、日々膨大なデータが生まれています。SNS・メルマガ・Web広告など、あらゆるチャネルから得られる情報を正しく整理し、即座に分析に活かせるかどうかが成功を左右します。
近年はBIツールやマーケティングオートメーションツールが注目される一方、実務レベルで最も活躍しているのはまだまだ「Excel」。
今回はマーケターがExcelを使いこなすメリットと、現場で役立つ名寄せ・ピボットテーブル・相関分析に加え、さらに押さえておくべき便利機能を含めた“最強のExcel仕事術”を紹介します。
1. マーケターがExcelを使いこなすメリット
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スピード感と汎用性
Excelは大抵の企業で標準インストールされており、データの取り込みや加工から、簡易レポートの作成まで一連の作業をひとつのソフトで完結できるのが強みです。 -
誰でもすぐにアクセスできる共通言語
専門ツールやカスタマイズした分析システムは、一部の人しか使えない場合も。しかしExcelなら職種を問わず使う機会が多いため、マニュアルや研修なしでも参加できるメンバーが多いのもメリットです。 -
データドリブン施策の入口として最適
大規模なBIツールやマーケティングオートメーションを導入する前段階として、まずはExcelでデータを使いこなす感覚を身につけられます。データをどう整理し、何を求め、どう施策に落とし込むか——その基礎体力作りの場として、Excelはとても優秀です。
2. データをクリーンアップする「名寄せ」の重要性
顧客データやリード情報を扱う際に、重複登録や表記ゆれがあると正確な分析ができません。そこで欠かせないのが名寄せ(データの重複・ゆれを整理統合する作業)です。
- Excelでの名寄せ手順
- 重複の削除:Excelの「重複の削除」機能や条件付き書式を使い、同一のメールアドレスや電話番号などを検出しやすくする。
- 表記ゆれの修正:関数(VLOOKUP, IF, SUBSTITUTEなど)を使って表記ゆれを一定のフォーマットに揃えたり、一括置換で整形したりする。
- 最終確認と手動チェック:自動処理だけでは、完全に誤差を排除しきれないこともあるので、抽出したデータをフィルタ機能で確認して仕上げを行う。
名寄せを徹底することで、重複メール送信や顧客データの管理ミスを大幅に減らし、顧客理解や施策の精度を高めることができます。
3. レポート作成に欠かせない「ピボットテーブル」の威力
Excelの代表的な機能といえば、ピボットテーブル。どんなに膨大なデータでも、見たい切り口を設定するだけで瞬時に集計表やクロス集計表を作成できます。
- ピボットテーブルの具体的な活用例
- 顧客セグメント分析:地域別・年齢層別・購入額別などで集計し、どのセグメントに強みがあるかを可視化。
- キャンペーン分析:期間ごとに広告予算とCV数・売上を紐づけ、費用対効果を把握。
- 集計の自動更新:データが追加されたらテーブルを更新するだけで、集計結果が一括で変更されるので、レポート作成時間が大幅に削減可能。
ピボットテーブルは操作性が直感的で、ドラッグ&ドロップするだけで瞬時にレイアウト変更も可能。マーケターが業務効率を上げるために、真っ先に習得すべき機能のひとつです。
4. データの因果関係を探る「相関分析」で施策を最適化
“この施策とあのKPIは関係あるのか?” “広告費と売上にはどれくらい相関がある?”
こうした疑問を解決するのに便利なのが、相関分析(Correlation Analysis)です。Excelでは、「CORREL関数」や「分析ツール」を使えば、統計ツールなしでも手軽に相関係数を求められます。
- 相関分析で見えること
- 広告費と売上の関係:費用をかけた分だけ売上が伸びているのかを数値化できる。
- メール開封率とCVR:メールの開封率が高いほどコンバージョンに結びつくのかをチェック。
- SNSフォロワー数と購買単価:SNS施策が直接売上に貢献しているかどうかを推測。
相関が強ければ必ずしも因果関係があるとは限りませんが、マーケティング施策のヒントを見つける上で有効なファーストステップとなります。
5. さらに役立つExcelの“プラスα”機能
5-1. シナリオ分析・ゴールシーク
マーケティング戦略では、*「このKPIを達成するには、何をどれだけ変えればいいのか?」*といった疑問が出てきます。Excelの「ゴールシーク」や「シナリオ マネージャー」を使えば、目標値から逆算し、必要な数値や条件を探索できます。
- 例:
- CVRを2倍にしたい場合、広告費やサイト訪問数をどの程度増やす必要があるか算出する。
- 新製品の目標売上を達成するための販売単価や数量を複数パターンで試算する。
5-2. VBAやマクロで作業を自動化
反復的なデータ整形やレポート作成を繰り返す場合は、ExcelのVBA(Visual Basic for Applications)やマクロ機能で自動化がおすすめ。
- 同じステップで行う名寄せ・複数ファイルの集計も、一度マクロを組んでしまえば数秒で完了
- 社内の他スタッフにも配布して、作業効率を全体的に引き上げられる
5-3. パワークエリやパワーピボット(Power Query / Power Pivot)
Excelの標準機能だけでなく、追加機能のパワークエリやパワーピボットを使うと、大量データの取り込みや高度なクレンジング、集計をスムーズに行えます。BIツールの機能をExcel上で軽量化したようなイメージで、大規模データの扱いに非常に強みを発揮します。
6. Excelを使いこなしてデータドリブンな組織文化へ
Excelは古いツールと思われがちですが、その“簡単かつ奥深い拡張性”から、マーケティングの現場でいまだ最強のアシスタントであり続けています。
- 名寄せでデータを正しく整理することで、キャンペーン漏れや重複を防ぎ、正確なターゲティングが可能。
- ピボットテーブルで瞬時にレポート化すれば、マーケ担当だけでなく営業・経営層にも成果をわかりやすく共有。
- 相関分析を行えば、複数の要因がどのように影響し合っているかを俯瞰し、施策の見直しや新しい実験アイデアが生まれる。
- さらに、ゴールシークやVBAマクロ、パワークエリなどを習得すれば、反復作業の時間を大幅に削減し、戦略立案やクリエイティブ業務により多くのリソースを割けるようになります。
Excelスキルは決して時代遅れではなく、デジタルマーケティングの世界でも確実に役立つ“基礎教養”と言ってよいでしょう。多様なデータを扱うデータドリブン時代のマーケティングにおいて、Excelを使いこなすことで意思決定の速度と正確性が格段に上がります。まずは小さなデータセットでも構わないので、*「データをどう整理するか?」「何を基準に分析するか?」*を常に意識しながら、Excelを実践的に使いこなしてみてください。
データを制する者こそがマーケティングを制する時代。あなたのExcelスキルが、チームや会社全体の成長を後押しする大きな武器となるはずです。
まとめ
- Excelの活用は導入ハードルが低く、即効性と柔軟性に優れている
- 名寄せ・ピボットテーブル・相関分析は基本機能として必ず押さえる
- シナリオ分析やVBA自動化、パワークエリなど、ワンランク上の機能も視野に
- データを使いこなせば、マーケティング施策の精度やスピードが格段にアップ
ぜひ、日々の実務にExcelを取り入れながら、一歩先の“データドリブンマーケター”を目指してみてください。
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