目次
1. はじめに:インサイドセールスの「存在感」と「違和感」
ここ数年で、インサイドセールスのプレゼンスは一気に上がりました。
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BtoB企業の新規開拓の中核を担う
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MA/SFAなどのデジタルセールスの「要」として機能
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フィールドセールスよりも早く育ち、成果も見えやすい
一方で、こんなモヤモヤも出てきています。
「CxOが増えているのに、Chief Inside Sales Officer(CISO)なんて聞いたことがない」
「マネージャーまではイメージできるけど、その先のキャリアが見えない」
一般的に CISO は Chief Information Security Officer(情報セキュリティ責任者)を指しますが、
インサイドセールスに携わる人の中には「自分たちのCISO(=最高インサイドセールス責任者)はいないのか?」という、
“頭打ち感”を抱く人も多いはずです。
この記事では、
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なぜインサイドセールスのプレゼンスは上がっているのか
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にもかかわらず、なぜ「CISOポジション」が存在しないのか
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インサイドセールス経験者が描ける、現実的なキャリアパス
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キャリア頭打ちを防ぐために、今日から何をすべきか
を整理していきます。
2. インサイドセールスのプレゼンスが上がった理由
まずは、なぜここまでインサイドセールスの重要度が増したのかを整理します。
理由①:フィールドセールスではさばききれないリード量
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Webマーケティングの発達で「とりあえず資料請求」「とりあえずウェビナー参加」のリードが急増
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全てを営業が直接訪問していたら、人的コストと時間が破綻
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「誰にどこまで商談化させるか?」を見極める機能としてインサイドセールスが必須に
理由②:オンライン商談・非対面営業の標準化
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オンライン商談ツール/ビデオ会議の普及により、電話やメールだけでなく、
「提案まで非対面で完結」するケースも増加 -
地域を問わず対応できるため、スケーラブルな新規開拓組織として評価
理由③:マーケティングとセールスの「つなぎ役」としての期待
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「マーケティングが作ったリードが、本当に売上に貢献しているのか?」
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この問いに答えるには、マーケの手前でも、営業の手前でもない“中間組織”が必要
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インサイドセールスが、リードから商談までの歩留まりを可視化し、
経営の意思決定に使えるデータを出せる存在になってきた
結果として、多くの企業で
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インサイドセールス部門が新設される
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マネージャー・リーダー職が増える
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経営会議で、インサイドセールスの数字が語られる
という状況が生まれ、「プレゼンスは確かに上がってきた」と言えます。
3. それでも「CISO」がいない理由
ーー役職は「機能」ではなく「経営責任」で決まるから
「マーケティング担当のCxO(CMO)はいるのに、
インサイドセールス担当のCxO(CISO)はいない…」
ここに違和感を持つ方も多いと思いますが、その理由はシンプルです。
経営は「チャネル単位」ではなく、「価値・成果単位」で役職を作るからです。
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マーケティング:市場戦略・ブランド・需要創出の責任 → CMO
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セールス:売上目標達成・パイプライン全体の責任 → CSO/CRO
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カスタマーサクセス:解約率/LTV/継続収益の責任 → CCO など
一方、インサイドセールスはあくまで、
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「新規顧客獲得に向けた重要なチャネル/機能」の 1 つ
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「売上に至るプロセスの一部を担う、中間組織」
と見なされることが多いポジションです。
そのため、役員レベルは、
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CRO(Chief Revenue Officer):収益全体の責任者
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CSO(Chief Sales Officer):セールス組織全体の責任者
といった「売上・収益」に紐づいた肩書きになりがちで、
「Chief Inside Sales Officer」という“チャネル限定”の役職は生まれにくい構造があります。
つまり、
インサイドセールスの価値が低いから CxO がいない
のではなく、役員はもっと広い“Revenue責任”で括られている
というのが実態です。
4. 「キャリア頭打ち」になりやすいパターン
とはいえ、現場感覚として「頭打ちだな…」と感じるケースは確かにあります。
その典型パターンを整理してみましょう。
パターン①:架電スキルに閉じてしまう
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架電件数・商談化率・トークスクリプトの改善にしか興味がない
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MAやCRMの設計には関わらず、「渡されたリストをどう回すか」だけで完結
→ 一見プロフェッショナルですが、「戦略ではなくオペレーションの人」と見なされがちです。
パターン②:KPIは説明できるが、“なぜそのKPIなのか”は語れない
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「今月の目標はコール数○○件・商談化率○○%です」までは話せる
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しかし、「なぜこの設計なのか」「売上にどう効いているのか」が語れない
→ 経営から見ると「作業を任せる人」止まりで、組織設計を任せにくい状態です。
パターン③:マーケ・フィールドセールスとの関係が弱い
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マーケとの連携は「とりあえずリード数を増やしてほしい」の一言で終わる
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フィールドセールスとは「質が悪い」「フォローが遅い」など感情的なやり取り
→ 「組織全体をつなぐハブ」ではなく、「摩擦が生まれるボトルネック」になってしまいます。
パターン④:PL/単位経済の理解がない
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「商談数」「受注数」までは興味があるが
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CAC(顧客獲得コスト)やLTV、粗利構造には踏み込まない
→ 役員から見ると「経営の数字が分からない人材」となり、
どうしても中間管理職どまりの評価になりやすくなります。
5. 「インサイドセールス出身」でCxOクラスを目指すための3つの進化
では、インサイドセールスを出発点にしつつ、
キャリアの頭打ち感を超えていくには何が必要でしょうか。
ポイントは、「役割」ではなく「責任の範囲」を広げることです。
① Revenue思考へのアップデート
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自分のKPIを、「売上」「粗利」「LTV」と結びつけて語れるようにする
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「このセグメントに対するアプローチは、○ヶ月後のMRRに○%影響する」レベルまで把握する
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営業・CSと一緒に、パイプライン全体の設計を議論する
ここまでできると、「インサイドセールスの人」から「Revenue全体を見られる人」へステップアップします。
② GTM(Go-To-Market)デザイン能力
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どのターゲットに、どんなメッセージで、どのチャネルから攻めるのか
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マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・CSを
どう分担させるのが最も効率的か
この「GTM設計」にコミットできると、
CROや事業責任者に近い視座で会話ができるようになります。
③ テクノロジー & データ活用スキル
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MA/SFA/CRM/インサイドセールス向けSaaSツールの構造を理解し、
「こう設計すると、このデータが取れる」という逆算ができる -
SQLやスプレッドシートで、マーケ~受注までのファネルを自分で分析できる
6. インサイドセールス経験者のキャリアパス具体例
「とはいえ、実際どんなキャリアがあるの?」という疑問に対して、
いくつか代表例を挙げてみます。
パス①:インサイドセールス → インサイドセールス組織の責任者 → セールス/Revenue部門長
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メンバー → リーダー → マネージャー → 部門長
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インサイドセールスだけでなく、BDR/SDR/フィールドセールス/CSまで見ていく
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最終的にはCRO候補として、「売上とパイプライン全体」を預かる立場へ
ポイント:
「インサイドセールス部長」で終わらず、
「営業・Revenue組織全体の設計」に自然と巻き込まれていくこと。
パス②:インサイドセールス → マーケティング(Demand Gen / Growth)
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リードの質・コンバージョン率に強みを持つ
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「どんなリードが商談・受注に至るのか」の知見を武器に、
マーケ側で施策設計を行う -
将来的には、デマンドジェネレーション責任者や、グロース責任者へ
ポイント:
「現場感のあるマーケター」として、
マーケティング部門でも即戦力になりやすいキャリアです。
パス③:インサイドセールス → RevOps/SalesOps(収益オペレーション)
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SFA/MAの設計や、レポート・ダッシュボードの構築に強い
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営業プロセスの標準化やKPI設計を担当
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将来的に、Revenue Operationsの責任者として、各部門を横断的に支える立場へ
ポイント:
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「人をマネジメントするより、仕組みを作るのが好き」というタイプにフィット
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海外SaaS企業では特に需要が高く、日本でも伸びつつある領域です
パス④:インサイドセールス → コンサル/SaaSベンダーのエバンジェリスト・コンサルタント
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自社で培ったインサイドセールス立ち上げ・改善の経験を、
複数企業に展開する立場へ -
ツールベンダーの「セールスプロセス改善コンサルタント」なども選択肢
ポイント:
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特定の業界やビジネスモデル(SaaS、サブスク、HR、ITなど)での成功パターンを持っていると強い
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自身のノウハウをコンテンツ化(note、ブログ、セミナー)し、
個人ブランディングと組み合わせるとキャリアの幅が広がります
7. 20〜30代インサイドセールスが「今」やっておきたいこと
最後に、キャリアの頭打ちを防ぐために、
20〜30代のうちからやっておきたいことを整理します。
① ファネル全体を自分の言葉で説明できるようにする
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「リード獲得 → アポイント → 商談 → 受注」の各フェーズで
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どんな施策があり
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どんなボトルネックがあり
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どの数字がどれくらい動いているのか
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これをホワイトボード一枚で説明できるようになると、
経営や他部門との会話が一気にラクになります。
② PL・ユニットエコノミクスの基礎を学ぶ
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1商談あたりのコスト感
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1受注あたりのCAC/LTV
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粗利率・チャーンレート
③ MA/SFA/CRMツールを「使える」ではなく「設計できる」レベルへ
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単なるユーザーではなく、「管理者目線」でツールを触ってみる
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「この項目を追加すると、○○のレポートが見えるようになる」といった発想を身につける
ツールの比較・導入を支援するサービスは多く存在するので、
そういった情報もキャッチアップしながら、自分の市場価値を上げていきましょう。
④ 情報発信で「インサイドセールス出身の専門家」としてポジションを取る
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X(旧Twitter)やブログで、
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トークスクリプトの工夫
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ファネル改善の事例
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ツール活用のTips
などを定期的に発信する
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社外のイベント・ウェビナーに登壇するチャンスがあれば、積極的に乗る
これらを積み重ねることで、
将来的にコンサル・講師・エバンジェリストなどのキャリアオプションも見えてきます。
8. まとめ:「インサイドセールスのキャリア」は職種名でなく“責任の範囲”で考える
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インサイドセールスのプレゼンスは確実に上がっている
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しかし、役職は「チャネル名」ではなく「経営責任」で決まるため、
Chief Inside Sales Officer(CISO)のような肩書きは生まれにくい -
だからこそ、「インサイドセールスの人」で終わるのではなく、
Revenue/GTM/Opsといった“広い責任”を見据えてスキルと経験を積むことが重要
「インサイドセールスのキャリアは頭打ちなのか?」
という問いに対する答えは、
“インサイドセールスのままで終わるなら頭打ち。
そこを起点に、Revenue全体を見に行くなら天井はない。”
です。
まずは、自分の現在地と、
「どこまでの責任範囲を担えるようになりたいのか」を言語化するところから始めてみてください。