キャリア スキルアップ

マーケターにMBAは不要?「広告屋」で終わらないための経営視点とキャリア戦略

あなたは「マーケター」ですか?それとも「広告運用担当」ですか?

「CPAは改善したのに、なぜ予算が増えないのか」 「ブランド認知は上がったのに、経営陣は納得していない」

もしあなたが今、このような壁にぶつかっているなら、それは「マーケティングの言葉」と「経営の言葉」のズレが原因かもしれません。

現場のスペシャリストとして優秀なマーケターほど、PL(損益計算書)やBS(貸借対照表)、そして全社的な経営戦略の視点が欠けていることがあります。ここで登場するのがMBA(経営学修士)という選択肢です。

今回は、マーケターがMBAを学ぶことの意味と、それがキャリアにもたらすインパクトについて、筆者の視点で解説します。

なぜ今、マーケターがMBAを考えるのか

ここ数年で、マーケターを取り巻く環境は大きく変わりました。

  • 広告運用やSNS活用は「できて当たり前」

  • マーケティングオートメーションやデータ分析ツールも一般化

  • 部署横断で「事業成長にどう貢献するか」がより厳しく問われる

その中で、企業がマーケターに期待する役割は、

「集客担当」から「事業を動かすビジネスリーダー」へ

と、確実に変わりつつあります。

しかし現場では、

  • ファイナンスや会計が苦手で、経営会議がしんどい

  • 「マーケ予算の妥当性」を数字で説明しきれない

  • 他部署を巻き込んでプロジェクトを動かすのが難しい

といった壁にぶつかる人も多いのではないでしょうか。

こうしたギャップを埋め、「経営の言語」でマーケティングを語れるようになるための手段の1つが MBA(経営学修士) です。

マーケターがMBAを取得する意味を一言でいうと

マーケターがMBAを取得する意味を一言で表すなら、

“現場の打ち手担当”から、“事業を動かす経営人材”へとポジションを引き上げるため

です。

MBAで学ぶのは、マーケティング単体のテクニックではなく、

  • 経営戦略

  • ファイナンス・会計

  • 組織・リーダーシップ

  • オペレーション・HR・イノベーション

など、ビジネス全体を設計・運営するための基盤となる知識と思考法です。

その中でマーケティングを捉え直すことで、

「自社の事業戦略の中で、自分のマーケ施策がどんな役割を果たしているのか?」

を、経営レベルで説明できるようになります。

マーケターがMBAで得られる6つの武器

① 経営視点でマーケティング戦略を語れるようになる

マーケティングは本来、「4P」や「3C」だけで完結するものではありません。

  • どの市場に参入し、どこから撤退するのか(ポートフォリオ戦略)

  • 中長期でどれだけ投資し、いつ回収するのか

  • プライシングやチャネル戦略をどう組み合わせるのか

といった経営レベルの意思決定と密接に結びついています。

MBAでは、

  • 経営戦略論

  • 競争戦略・イノベーション

  • 事業ポートフォリオ/コーポレート戦略

などを、マーケティングのフレームとセットで学びます。

その結果、

  • 「このキャンペーンはCTRが高いです」
    ではなく、

  • 「このセグメントに集中投資することで、3年後のポジション取りと利益構造がこう変わります」

といった “事業のストーリーの中でマーケ戦略を語る力” が身につきます。

② P/LとROIで語れる“数字に強いマーケター”になれる

経営層の関心は、最終的には「利益」と「キャッシュ」です。

にもかかわらず、現場のマーケティングは、

  • CPA、CTR、CVR、ROAS といった指標に閉じがち

  • 「売上は伸びたけれど、利益はどうなった?」が抜けがち

という状態になりやすいです。

MBAでは、

  • 財務会計(BS・PL・CFの読み方)

  • 管理会計(損益分岐点・固定費/変動費・貢献利益など)

  • ファイナンス(投資判断、NPV、IRRなど)

を体系的に学ぶことで、

  • 「この施策にいくら投資し、いつまでに回収するのか」

  • 「粗利と営業利益レベルでどう効いてくるのか」

  • 「キャッシュフローへのインパクトは?」

まで踏み込んで説明できるようになります。

つまり、

「CPAを◯円下げました」から
「営業利益を年間◯◯万円改善しました」

へと、語れるレベルが一段上がるイメージです。

この視点が持てると、
予算獲得や経営会議での説得力は一気に変わります。

③ 部門をまたいだ“組織を動かす力”が身につく

どれだけ優れたマーケティング戦略でも、

  • 営業部と方針が噛み合わない

  • プロダクト側の開発優先度が合わない

  • カスタマーサクセスと連携されていない

といった状態では成果につながりません。

MBAの授業ではケーススタディを通じて、

  • ステークホルダーの利害をどう整理するか

  • 部門間のコンフリクトをどうマネジメントするか

  • 組織変革をどう進めるか

といった 「人と組織を動かすスキル」 を、疑似的に体験しながら学びます。

マーケターが陥りがちな

「良いアイデアはあるのに、社内が動かない」

という悩みを解消するヒントが、ここに多く含まれています。

④ 海外・他業界のベストプラクティスを取り込める

MBAのケース教材や授業では、

  • 海外のD2CブランドやSaaS企業

  • プラットフォームビジネス

  • グローバルブランドの市場戦略

  • 伝統的な製造業の変革事例

など、多様なビジネスモデルに触れます。

これによって、

  • 自社の業界に閉じない発想

  • 他業界の成功パターンを自社に「移植」する視点

  • 長期的な競争優位をどこに作るべきかという視座

が養われます。

「このサブスクSaaSのプライシング戦略、
うちの定期購入モデルにも応用できるかも」

といった “視点のストック” が増えることで、打ち手の質も上がっていきます。

⑤ 「MBAホルダー」という信頼のショートカット

もちろん、肩書きだけですべてが決まるわけではありません。
ですが、現実的には、

  • 転職市場での書類選考

  • フリーランス・副業での新規クライアント開拓

  • 経営層・他部門と初めて仕事をするときの安心感

といった場面で、

「経営全般を一定レベルで理解している人」

というシグナルとして、MBAは機能します。

特に「マーケティング出身の人材」が、
事業責任者や経営企画寄りのポジションを狙う際には、
信頼を獲得するうえでの ショートカットの1つ になりえます。

⑥ 生涯続く「人的ネットワーク」という無形資産

MBAの大きな価値のひとつが、人的ネットワーク(人脈) です。

同じクラスには、

  • 事業会社のマーケター・プロダクトマネージャー

  • コンサル・広告代理店・制作会社のプランナー

  • 経営企画・新規事業・営業責任者

  • 起業家やフリーランス・専門職(弁護士・会計士など)

など、業界も職種も異なる「将来のリーダー候補」が集まります。

こうしたネットワークは、在学中だけでなく卒業後も、

  • 転職・独立のリアルな情報交換

  • 新規事業・起業アイデアの壁打ち

  • 協業・アライアンスの相手探し

  • 採用・副業メンバーの紹介

など、 キャリアのあらゆる場面で活きる“無形資産” になります。

さらに、スクールによっては、

  • 業界別・テーマ別のOB/OGコミュニティ

  • 卒業生限定イベント・勉強会

  • 海外校とのネットワーク

などが整備されており、年次・業界・国をまたいだネットワークを築くことも可能です。

マーケターの場合、

「代理店や同業他社のつながりは多いけれど、
他業界の経営層との接点が少ない」

といった偏りを解消できるのも大きなメリットです。

知識やツールは陳腐化していきますが、信頼をベースとした人的ネットワークは時間とともに価値が増していきます。
MBAは、そのスタート地点になり得ます。

どんなマーケターにMBAは向いているのか

MBAは「全員にとって絶対に必要な資格」ではありません。
特にメリットが大きいのは、次のようなタイプです。

  • 将来的に CMOや事業責任者、経営層 を目指している人

  • すでにチームリーダー/マネージャーで、経営層との距離を縮めたい

  • 事業会社⇔コンサル⇔スタートアップ など、キャリアチェンジを考えている人

  • マーケ現場のノウハウはあるが、経営を体系的に学んだことがない

  • 海外ビジネスやグローバル案件に関わりたい人

一方で、

  • 社会人経験が浅く、まだ職種も固まっていない

  • 「そもそもマーケティングが自分に合うか分からない」

といった段階の人にとっては、
高額な費用と時間を投じるMBAは、投資対効果が見えづらい場合もあります。

その場合は、まずは短期講座やオンラインプログラムで「ミニMBA的」に試してみる方が現実的です(後述)。

働きながらMBAを取得する場合のスクール選びのポイント

多くのマーケターは「仕事を続けながらMBAを取りたい」と考えます。
その場合、以下のポイントでスクールを比較すると選びやすくなります。

① 通学型か、オンライン/ハイブリッド型か

通学型MBA

  • メリット

    • ディスカッションの密度が高い

    • 同期とのつながりが濃くなりやすい

    • 授業への集中力を保ちやすい

  • デメリット

    • 時間・場所の制約が大きい

    • 残業や出張が多いと継続が大変

オンライン/ハイブリッド型MBA

  • メリット

    • 場所を問わず受講できる

    • 海外MBA・国内オンラインMBAなど選択肢が広い

    • 仕事や家庭との両立がしやすい

  • デメリット

    • 自主性が求められ、受け身だと学びが薄くなる

    • ネットワーキングは意識的に動かないと弱くなりがち

自分の働き方やライフスタイルを踏まえ、
「2年間続けられる現実的な選択か?」という視点で考えるのが大事です。

ちなみに筆者の経験として同居家族がいる場合、100%家族の協力が必要不可欠と言い切れます。
特に子育てについてはパートナーに相当の負担がかかったと思います。

もしMBAへの進学が決まった際には、ご家族への感謝を忘れてはいけません。

② カリキュラムの「マーケ・戦略」比率

マーケター目線で特にチェックしたいのは、

  • 戦略・マーケティング科目がどの程度充実しているか

  • デジタルマーケティングやデータ分析の科目があるか

  • 実務プロジェクトやケーススタディが豊富か

といった点です。

単に「マーケ科目があるかどうか」ではなく、

  • 自分の今の課題(例:ファイナンスが弱い)

  • 今後強化したい領域(例:組織マネジメント、グローバル戦略)

と照らし合わせて、「このプログラムで強みを伸ばせるか?」という観点で見るとミスマッチが減ります。

③ 費用とリターン(回収期間のイメージ)

MBAは決して安い投資ではありません。

  • 学費(数百万円〜)

  • 教材・交通費などの周辺コスト

  • 学習に使う時間(機会費用)

などを踏まえつつ、

  • どれくらいの年収アップ・ポジションアップを目指すのか

  • 転職や独立などのキャリアチェンジをどの程度見込むのか

  • 何年で「投資回収」できそうか

を大まかにシミュレーションしておくと、
学び続けるモチベーション維持にもつながります。

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MBAは「肩書き」ではなく「経営の言語」と「ネットワーク」を手に入れるプロセス

マーケターがMBAを取得する意味は、単なる学歴アップではありません。

  • 経営の言語でマーケティングを語れるようになること

  • P/LやROIベースで意思決定できるようになること

  • 部門をまたいで組織を動かす力を身につけること

  • 海外・他業界のベストプラクティスを取り込めること

  • 信頼のショートカットとしての「MBAホルダー」というシグナル

  • そして何より、生涯続く人的ネットワークという無形資産 を手に入れること

MBAそのものが魔法のカードになるわけではありません。
ですが、

「現場のマーケターで終わりたくない」
「もっと経営に近いポジションで仕事がしたい」
「事業を動かせるマーケターになりたい」

と感じている人にとって、
MBAはキャリアの天井を一段引き上げる、非常に強力なレバレッジになり得ます。

まずは、小さな一歩として

  • 経営の入門書を読む

  • オンライン講座でファイナンスを学んでみる

  • ミニMBAに参加してみる

といった行動から始めてみてください。
その先に「MBAに投資するかどうか」という、より具体的な選択が見えてくるはずです。

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  • この記事を書いた人
Glass

Glass

【経歴】
▶︎ ITベンチャー/営業部長 ▶︎ リーガルテック事業責任者 ▶︎ 大手広告代理店 ▶︎マーケティング支援企業 ▶︎コンサルマーケ職(現職)
MBA(経営学修士),WEB解析士
【専門領域】
マーケティング・サイエンス,行動経済学,消費者行動,マーケティング・オートメーションなど
【コンタクト】
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